日本学術振興会特別研究員

 年度が始まり、そろそろGWだなと思うようになると、そういえばあの時期がきたな、と思うのです。あの時期というのは、日本学術振興会特別研究員(DC, PD, RPDなど)申請書を所属機関に提出する締切の時期です。
 実は私は、申請書を書くのは割と好きな方です。これまで日本学術振興会特別研究員DC2・PD・RPDに内定しましたが、どの時もそれなりに楽しんで書きました(DC1には応募せず、RPDは運よく常勤職につくことができたために辞退しました)。その時期を振り返って、申請書を書く時に気をつけていたことをいくつかメモしておこうと思います。

(1)誰かに見せてもらう
 特別研究員に応募しようと思ったら、まず友人・知人・先輩方から申請書をいただきました。もっと正確にいうと「誰それ先輩は自分が通った時の申請書を見せてくれるらしい」という噂を聞きつけて「そんなことがあるのか!」と驚くところから始まりました。私の出身研究室では、特別研究員に内定した先輩方が、親切にも後輩に見せてくださいました。見せていただいたものをじっくり読み込み、どのように書けばいいのかを勉強します。ここで「どのように書けばいいのか」というのは、論旨の展開の仕方や文章表現といった高度なものから、どうすれば目を引く申請書を書けるのかという、純粋に技術的なものまで含みます。最近はブログなどでご自身の申請書を公開している方もおられるようですので、そういう方にお願いして申請書を見せていただいてもいいのかもしれません。
 蛇足ですが、見せていただいた方には後日、御礼かたがた結果の報告もしましょうね。

(2)何度も書く
 私は一度でいい文章を書けたことがほとんどありません。申請書でも論文でも学会報告や研究会の口頭報告でも、大体いつも何かを書くときは3回以上書いています。ちなみに論文も査読コメントをいただく度に内容がかなり変わってしまうことが多く、査読者の方々には毎回本当にご迷惑をおかけしています……。
 1回目に書くときは、論文の書き方とほとんど同じように書いています。といっても、申請書では書くべき項目が前もって決まっているので、まずその項目を書き出して、その項目ごとに書きたい内容をどんどん箇条書きにしていって、これ以上思いつかないところまで書いたら、箇条書きにした内容の順番を入れ替えたり、重複を削ったり、足りないところを補ったりして、最後に文章にするというやり方です。ちなみに、ものすごく行き詰まったときは裏が白い紙を小さくちぎって、そこに頭の中に浮かんでいる単語をどんどん書く作業を15分ぐらい(論文を書くときなら30分ぐらい)やって、そのあとその単語が書いてある紙の切れ端を机の上に広げて、全部を漫然と眺めながらグループ分けしていきます。風が吹いたら紙が飛んでしまうので、毎回紙が飛んでしまってから「付箋でやればよかった」と思っています。単語をグループ分けしたら、それをノートなりPCなりに書き込んでいって、単語を補って、箇条書きのメモにしていきます。あとは箇条書きのメモから文章を作っていくだけです。

(3)人に読んでもらう
 一度は自分以外の人に読んでもらう機会を持つことを、強くお勧めします。私はだいたい、1度書いてみて書き直した時点のものを読んでもらいました。特別研究員の申請書は(科学研究費の申請書も)、同業者(研究者)が読むという点で、例えば自分の両親に研究について話したり、大学院に行きたいから学費を出してくれと説得するより、だいぶ楽なはずだと信じています。うちの親ときたら(以下自粛)。
 誰に読んでもらうか、ですが、一緒に申請する人同士で読み合いっこするのはいいかもしれません。気のおけない仲なら、わかりにくいところやもっと強調すべきところを遠慮なく話し合えるでしょう。ただ、同期や親しい先輩・後輩間だと、すでにお互いの研究内容を知っているので、それがかえって申請書の問題点を見えにくくしてしまう時もあるかもしれません。欲を言えば「自分のことを知っているけど研究内容はそれほど知らない」大学関係者(隣接分野)の人にも、一度読んでもらえると心強いですね。まあ、そういう人はなかなかいないんですが……。

(4)こっそり毎回やっていること
 ちょっと恥ずかしいのですが、私は時間に余裕のあるときは、自分の書いたものを声に出して読むようにしています。声に出すことで、自分の書いたものが目で見ている時とは少し違って感じられるような気がするのです。それで「あ、この言い回し変えよう」「ここは同じことを言ってる」「一文一文が無駄に長い」と思うこともよくあります。あと、これは単に私がそう思っているだけなのですが、声に出して読んで快い文書は、目で見ても快いのではないかと思っています。お前は申請書に何を込めているんだ、と言われると、まあその通りなのですが……。
 申請書では、いつも「今こんな問題がある→現状ここまでわかっている→それでも分からないことがある→だからこのことを調べる→これがわかるとこんな素晴らしいことが!→もし私が調査研究に専念できればこんなことができます」というストーリーを展開するように心がけていますが、声に出して読んだ時に、この筋を無駄なく展開できていると、自分でも気分が盛り上がります(ああ、本当に私アホみたい……)。
 2年や3年で、天下国家を救うような、偉大な研究ができるわけではないかもしれません(私に限って言えば、そういうのは無理です)。でも、その程度の期間で、私程度の能力でも、学術的には意義のあることはできるし、それはこの程度のお金があればこの程度の時間でできます、計画はばっちり、あとはお金と時間をください! と自分以外の人にきちんと説明する機会は、私はとても大事なものだと思っています。だから私は、特別研究員の申請書を書くのは、そういう意味で、ちょっとしんどいけどけっこう好きです。行き詰まったときは「私はなんでこの研究をしたい(しないといけない)と思っているんだろう」「この対象の何に(どこに)私は惹かれているんだろう」と考えることにしています。

 余談ですが、学術研究で「それをやって何が面白いんですか」と質問される(したくなる)場合、「あなたがその対象を調査しなければならないと思っておられる理由は何なのですか」と質問すればいいのではないかと思っています。

 今まで一度だけ、特別研究員に申請して落ちたことがあります。海外特別研究員に応募した時です。このときは、「この調査をしたい」という気持ちよりも「海外で調査したい」という気持ちが先に立っていました。この時に書いた申請書は、今になって読み直してもいまいちな出来です。自分で自分を説得できないときは、やっぱり他人も説得できないのかな、と思います。

 色々と偉そうなことを書いてしまいましたが、今まさに申請書と格闘しておられる方が、朗報を得られますことを心から願っております。

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