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証言の中の記憶

 既にだいぶ前のことになってしまいましたが、研究科の紀要『国際文化学研究』に翻訳が掲載されました。Michael LynchDavid BogenによるThe spectacle of historyDuke University Press, 1996)第6章、”Memory in Testimony” (pp.178-200)を訳しました。

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 記憶と歴史の関係については、そのものずばりのタイトルの本が出されていることから明らかなように、歴史学や哲学で既に多くの論考があります。それらの研究が重要であることはもちろんですが、社会学が記憶や歴史を論ずるとき、何をどうすれば独自の(社会学ならではの)貢献ができるのかと考えたとき、こういう方向になるんじゃないかなあと思っています。記憶は、実は見てわかるような形で、人々がやり取りする中にある。私たちは日常的に、過去にあったことについてお互いに確認したりそれに基づいて予定を考えたり喋ったりできる。そのあり方を示せば、もしかしたら記憶や歴史をめぐる色々な論争に、そのもっと手前のところから、お役に立てるんじゃないかなあ、と思います。

 今回この件で初めてLynchBogenにメールしました。「翻訳したいから出版社に版権について問い合わせますね」と「翻訳が刊行されましたので添付します」だけですが、やっぱり少し緊張しました。きっと誤訳や間違いがあると思います。ご指摘ください。少しずつ訳していって、そのうちまとめられたらいいなあ。